6月の花
ササユリ(古名 ゆり)
道の辺(へ)の 草深百合(ゆり)の 花笑(ゑ)みに
笑(ゑ)まししからに 妻と言ふべしや (作者不詳 万葉集巻7−1257)
本州中部以西の山地に生えるユリ科の草本です。夏に茎の先に、長さ10cm内外の大輪で淡紅色のかれんな花を開きます。本州中部以北に生えるヤマユリと似ていますがヤマユリは白色の花で内面に赤い小点が多くみられます。万葉集に出ているユリは、この2種が考えられます。
ノビル(古名 ひる)
醤酢(ひしほす)に 蒜(ひる)搗(つ)き合(か)てて 鯛(たい)願ふ
われにな見せそ なぎの羹(あつもの) 長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ 万葉集巻16-3829)
山野や池の堤などに生えるユリ科の草本です。葉は細長く、下方はさやとなっています。茎は柔らかい柱状をして立ち、淡緑色で高さ約60cm。初夏に茎の先に白紫色の花を開きます。花には小球状で紫色の珠芽の混ざっていることがあり、葉や土中の鱗茎は食用になります。野に生えるヒルの意味でノビルの名前といわれています。
アジサイ(古名 あぢさい) ユキノシタ科
あぢさゐの 八重咲く如く やつ代にを
いませわが背子 見つつしのばむ (橘諸兄 万葉集巻20-4448)
アジサイは、観賞品として広く栽培されている落葉低木です。もとは、ガクアジサイを親として、日本で生まれた園芸品といわれています。万葉植物園には。約40株を植栽し、6月の花期には、訪れる多くの人の目を楽しませてくれます。
わすれ草 垣もしみみに 植ゑたれど
しこのしこ草 なほ恋ひにけり (作者不詳 万葉集巻12-3062)
わすれ草は、トウカンゾウ、ヤブカンゾウ、ノカンゾウを含めて言うのでしょう。憂いを忘れさすような美しい黄赤色の花を咲かせます。ヤブカンゾウ、ノカンゾウの花期は、少し遅くなります。